皆さんこんにちは災害医療大学です。
ここまでの災害医療概論の中で、災害というものを簡単に学んできました。
3限目では災害医療の特徴を見ていきましょう!
音声版は下の動画をご覧ください。
災害医療とは
簡単に災害医療とは、「災害時の医療」、「資源が少ない中でたくさんの傷病者の対応をする医療」と言えます。
まずは日本救急医学会が発信している災医療を見てみましょう。
災害医療とは需要が供給を上回る状態で行う医療で、時間・人材・資機材が限られた状況下において内因・外因を問わず様々な傷病に対して緊急対応が求められます。
日本救急医学会 救急医を目指す君へ
簡単に解説します。
需要とは、傷病者のように医療を必要とする人を指します。
供給とは、使うことのできる時間・医療スタッフ・医療資機材のような医療資源が当たります。
地震や津波のような自然災害、テロなどの人為災害が起きた際には大量の傷病者が発生します。
大量の傷病者=医療の需要が高まります。
災害時には被災地近隣の病院等の医療機関も被災しているため、需要に見合うだけの医療資源を供給できない状態になります。
救急医療と違う点、似ている点
災害医療に似ている医療の種類として救急医療があげられます。
実際のところ、災害医療と救急医療は似ていますが、根底の考え方が異なっています。
まずは似通っている点を見ていきましょう!
似ている点
災害医療に携わる医師は救急医である。ということはとても多いです。
それはなぜでしょう?日本救急医学会で分かりやすくまとめています。
〈 https://qqka-senmoni.com/detail/10skill-list/disaster-medicine 〉
要約すると治療の優先順位をつけることに慣れている、初期治療に慣れている。ということがあげられます。
治療の内容やとっさの判断が重要であるという点が似ている点です。
異なる点
異なる点は、患者の人数と医療スタッフ〈医療資源〉の比です。極論この比が災害医療の特徴です。
災害医療は圧倒的に需要が供給を上回っています。
ではどうすればバランスが取れるでしょうか?この答えが災害医療の考え方になります。
答えは、「需要を減らし、供給を増やす」。この考え方が大切です。「需要を減らす」とは、需要が過剰になっている現場における需要を減らす(搬送)。という意味です。「需要を散らす」というとらえ方でもOKです!
救急医療と災害医療の違いのまとめ
救急医療は患者〈需要〉が少なく、医療資源〈供給〉が多い。
→一人の患者に最大限の医療資源を使う
=患者1人に対し、医療職5人〈あくまでも一例です。〉
災害医療は患者〈需要〉が多く、医療資源〈供給〉が少ない。
→最優先の患者に対し、最低限の医療資源を使う
=医療職1人に対し、患者30人
災害医療と救急医療の切り替えのポイントはこちらの書籍で詳しく書いています。
災害医療の3つの特徴
先ほど災害医療の特徴は「需要を減らし、供給を増やす」とお伝えしました。
まずは需要を減らすというところから見ていきます。
搬送
まずは現場にいる患者の数を減らすところから。
救急車やヘリコプターなどを用いて患者を受け入れできる病院に搬送します。
搬送によって需要を散らします。
搬送には2種類の搬送が存在します。
「地域医療搬送」「広域医療搬送」です。
地域医療搬送 | 広域医療搬送 | |
搬送地域 | 被災地内外を問わない | 被災地外 |
搬送主体 | 都道府県・病院 | 国 |
地域医療搬送
地域医療搬送とは、被災地内外を問わず、都道府県や病院がヘリコプター、救急車等で患者を搬送する医療搬送です。
災害現場→医療機関→航空搬送拠点臨時医療施設〈SCU〉の搬送を含みます。
広域医療搬送
広域医療搬送とは、国が自衛隊機等の航空機を用いて被災地から被災地外に航空搬送する医療搬送です。
民間や自衛隊の空港に航空搬送拠点を設置します。
トリアージ
トリアージとは、傷病者を重症度によって順番付けを行うことです。医療需要を整理します。
より重症かつ現状で救える見込みのある患者から順に手当を行う
という考え方に基づきます。
トリアージは「医療資源を効率的に使う」という考え方にも基づいています。
全員を同時に見ることができればよいのですが、資源が足りない以上振り分け・段階付けが必要です。
安定化療法
通常の医療機関では基本的に根本治療を行いますが、災害医療においては安定化療法です。
これは最低限の医療資源で安定化し、医療資源が供給されたら根本治療に移行する
という考えに基づきます。
以上が災害医療の特徴の3点です。
・需要を減らす〈分散する〉搬送、
・需要を整理するトリアージ、
・需要を最低限で抑える安定化療法。
これらは確実に覚えましょう!
供給を増やすために、「災害派遣医療チームの派遣」というものがあります。
超急性期から支援に入るDMATチームや赤十字チームが有名です。他にもたくさんの医療チームが支援に向かいます。
災害医療の目的
特徴の中でちょくちょく出ていましたが、災害医療においては最大多数の傷病者の救命と後遺症の軽減を目指します。
また、防ぎえた災害死を減らします。
防ぎえた災害死とは
防ぎえた災害死とは医療が適切に介入すれば避けられた可能性のある災害死のことです。
災害の影響で直接死んでしまった人(圧死など)は助けることができません。
避難所などの衛生環境が原因となる死亡例や、平常時の医療レベルがあれば助かったはずの命のことを「防ぎえた災害死」といいます。
災害医療の目的を簡単にまとめると、「災害時でも平常時レベルの医療を提供できることを目指す」ですね。
災害医療をゲームに例えると
災害医療に関して、ここまで「災害」「防ぎえた災害死」等々の言葉がたくさん出てきました。
シューティングゲームに例えて整理しましょう!
この図のように、皆さん医療チームを主人公とすると、敵は「防ぎえた災害死」、ステージ構成は「災害」となります。
限られた「弾=医療資源」を使って敵を倒す。
シンプルですね!
災害医療は「やりこみゲーム」です。
災害を知ればステージ構成が推測できます。どこに「敵=防ぎえた災害死」が発生するか推測し、やばい敵から効率的に倒すトリアージをおこなう。
ゲームに例えるなんて不謹慎だ!!
といわれるかもしれませんが、ゲームのように「俯瞰した目線」「冷静な判断」は大切です。
以上、災害医療概論 3限目「災害医療の特徴」でした。
4限目では災害医療における重要な考え方である「災害サイクル」を紹介します。
では確認テストを終えた人から解散で~す。
確認テスト
第一問 災害医療の現場では供給が需要を上回っている。
第二門 災害医療においては安定化療法を行う。
↓
↓
↓
↓
回答一 誤り 需要が供給を上回っている。
回答二 正しい
次はこちらの講義をどうぞ!
コメント