災害現場において、傷病者の緊急度や重症度を即時に判断するトリアージ。
一人でも多くの人の命を救うため、時間的な余裕はほとんどありません。
災害の現場でよく使われるSTART法トリアージにおいては、傷病者1人当たり30秒で行う必要があるとされています。(日本赤十字社 和歌山医療センター)
そんな中、聴覚障がいや言語障がいなどを持つ人を目の前にした時、全ての問診を筆談で行うことは難しいでしょう。
そこで、このページを通してトリアージで役立つ手話を動画付きでご紹介致します!!
※本講義は災害医療大学と手話Tik Toker彩蓮とのコラボです。
障害と災害医療
現代の日本には、身体障がい者436万人、知的障がい者108.2万人、精神障がい者392.4万人います。
これは、割合にして日本人口の7.4%の人が何らかの障がいを抱えているということです。
災害発生時、彼らは健常者のように即時に避難することが難しい傾向にあるのではないでしょうか??
実際、東日本大震災発生時、健常者の死亡率に対し2倍もの割合の障がい者が犠牲になりました。
「死亡者及び行方不明者は、18,520人(2014年2月現在政府発表)になり、そのうち障害者の死亡率は住人全体に対する死亡率の2倍にも達していたという事実が明らかになった。中でも防災無線が聞こえず津波が来ることも知らずに亡くなった聴覚障害者が多くいた。」
全日本ろうあ連盟 » 東日本大震災から3年を迎えて 3.11声明
想像してみてください。
目隠しをした状態の時、耳栓をした状態の時に災害が起きたとしましょう。
皆さんはどんなアプローチがあれば無事避難できるでしょうか?
皆さんが医療者として何ができるのかを考えてみましょう!
見逃されやすい聴覚障がい
多くの障がいの中でも、聴覚障がいは比較的見逃されやすい傾向にあります。
その理由はさまざま考えられますが、見た目では分かりにくいことが大きな理由なのではないでしょうか??
補聴器を使用していても、車椅子や白杖ほどは目につきにくく、聴力の度合いによっては補聴器を使用していない人もいます。
難聴でも、健常者と同じように話すことができる人もいます。
そのため、非常時において十分な支援を受けられなかったり、後回しにされることが多いのです。
そんな聴覚障がい者や難聴者の多くは主なコミュニケーションツールとして、手話を使用しています。
そのような人たちを目の前にしたとき、少しでも円滑に対応をすることができるように、災害医療の現場で使うことが想定されるフレーズの手話を見てみましょう!
今回は、「現場のトリアージ」というシチュエーションで想定してみました!
動画を見ながら一緒に手を動かしてみてください!
〈簡単に〉トリアージとは
トリアージとは、傷病者がたくさんいる際に、重症度に応じて医療資源の使用順を分類することです。
今回紹介する手話は「START法トリアージ」で使用することが想定されるフレーズです。
START法トリアージはトリアージの中でも「災害が起きた現場」で主に使用される手法で、迅速で簡単なトリアージという意味です。
START法トリアージの詳細はこちらから!
トリアージの際に医療者が聞かなければならない事項があります。
まずはトリアージの結果を記載する「トリアージタッグ」を見てみましょう!
この中で、傷病者に聞く事項は
・氏名・年齢・性別・住所・電話番号 となっています。
このほかにもSTART法トリアージの判断材料として
・歩行の可否・呼吸数・脈拍・従命反応(意識) の4項目があります。
判断材料の4項目は傷病者本人からではなく、皆さん自身が測定するものとなっているので今回は深く触れていません。
トリアージに役立つ手話 ~医療者目線~
実際のトリアージ現場において、医療者が使用できる手話をまとめてみました!!
「トリアージ」の流れを4つに分け、
- あいさつ
- 傷病者の情報収集
- トリアージの判断基準となる事項の補足質問
- 離れる際の言葉
としました。
手話は手の動きだけではなく、表情や口話も含めて成立するため、実際に手話をするときは口元や表情が見えるようにすることが一般的です。
1.あいさつ
「医師の〇〇です」「看護師の〇〇です」「私は医療従事者です」
自身の名前は、基本的に五十音一つ一つに対応する指文字を使用します。
自分の名前に出てくる指文字、この際覚えちゃって下さい!!(自分の名前の指文字を覚えておくととても便利です!)
最悪、「私は医療従事者です。」でもOKです!
「安心してください」「落ち着いてください」
2.傷病者の情報収集
「お名前を教えて下さい」「住所を教えてください」「電話番号を教えてください」
この(何)の手話、実は万能だったりします。(笑)
「ここに書いてください」
「ここに書いてください」〈筆談〉
3.判断基準となる補足質問事項
「歩くことはできますか?」「どこか痛いところはありますか?」
「歩くことはできますか?」
この(可能)の手話は(大丈夫)という意味の手話にもなります。
「どこか痛いところはありますか?」
4.はなれる際の言葉
「また戻ってきます。しばらくの間待っていてください。」「あちらに待機所があります。移動してください。」
「また戻ってきます。しばらくの間待っていてください。」
「あちらに待機所があります。移動してください。」
トリアージに役立つ手話 ~患者目線~
問診した際などに、患者さんから言われるであろう手話をまとめました!!
「歩けます」「歩けません」
人によっては、うなずくだけの人、(可能)(難しい)の手話のみ表現する人もいるかもしれません。
「痛い」「苦しい」
頭痛の場合は頭付近、肢の場合は肢付近というように、表現した場所によりどこが痛いのかも同時に伝えることができます。
(痛い)同様、表現した場所により、どこが苦しいのかも同時に伝えることができます。
「聞こえない」「分からない」
多くの聴覚障がい者は自身が聞こえない事をまず伝えようとすると予想されます。
もしこのような表現をしている方がいたら、手話を使用したり、ゆっくり話したりすることで意思疎通が可能になる場合が多いです。
最後に+自己紹介
今回は、トリアージで使えると思われる手話をいくつかご紹介しました。医療現場での手話は専門的な部分も含むため、日常の病院の中でも診察が後回しになったり、医師や看護師に自身の症状を伝えることが困難な場合があることも事実です。特に病院では、多くのスタッフがマスクを着用しているため、口元が見えず何を言われているのか分からない場合が多いのです。。。
もし、このページを通して少しでも手話に興味を持ってくださった方がいらっしゃいましたら、Tik Tokで手話について情報発信をしているので是非ご覧ください!
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