皆さんこんにちは!災害医療大学です!
「災害対策本部」と聞いてどんな風景をイメージしますか?
災害医療に関する写真などを見たことがある人なら、
「ホワイトボードにびっしり書かれた情報」をイメージしたかもしれません。
その、「ホワイトボードにびっしり書かれた情報」というのが「クロノロジー」です!
今回はクロノロ・クロノロジーについての講義です。
クロノロ・クロノロジーという言葉で聞いたことがあるかもしれませんね!
クロノロとはなにか?
災害におけるクロノロジーは時系列に出来事〈情報〉をまとめることです。
クロノロの正式名称はクロノロジー(chronology)で、「クロノロ」と呼ばれています。
もともとのクロノロジーの意味は「年代学」です。
基本的にはホワイトボードや、ビニールに記載をするのですが、
最近では電子版のクロノロも開発されています。
電子化することで避難所内だけでなく、避難所の外とも情報の共有ができるようになります!
クロノロは誰でも使える超重要スキル
クロノロは医療行為ではありません。
クロノロは災害医療というよりも、災害対策本部などで活躍する事務的なスキルです。
たくさんの情報が集まるところならどこでも活かすことのできる情報集約・整理する技術です。
医療関係の仕事の人だけでなく、一般の方でも学生でも実践できる超重要スキルです。
僕的には一般の方がトリアージを学ぶよりもクロノロを学んだ方が即戦力になるな~と思います。
ぜひ学んでみましょう!
クロノロで共有される4つの情報とメリット
クロノロは時系列ごとにどんな情報が、どこから入ってきたのか?
それに対してどのような対処をしたのかが一目でわかります。
つまり、以下の4点を全員で共有することができます。
- 本部で起きている〈起きていた〉事柄
- 本部のとっている指針
- 現在どのような活動をしているのか
- どのような問題が発生しているのか
クロノロのメリットは情報が共有されることだけではありません。
情報を間違えていないか〈勘違いしていないか〉や、どこに問い合わせればいいかもわかりやすいため、本部の混乱を防ぐことができます。
クロノロが発揮される場所
クロノロを使うのは情報が集められる場所ではどこでも使います。〈使った方がまとまりやすい〉
つまり、災害対策本部や、病院の本部、避難所の本部などですね。
クロノロは情報を集約・共有するためにあるので、必要に応じてどこでも使うことができます。
クロノロの記載事項4点
基本的にクロノロの書き方に決まりはありません。
見やすくて、わかりやすく情報がまとまっていれば問題ありません。
しかし、以下の情報は欠かさないようにしましょう!
- 情報の入った時間
- 誰から入った情報か
- 誰が受け取ったか
- 内容
時系列に記載する必要があるので、
15時に「18時に救急車が来る」という情報が入ったとすれば、
15時の欄に「18時に救急車が来る」と書きましょう!
ここまでは簡単にクロノロを説明しましたが、
本格的なクロノロのルールを紹介します。
クロノロに関する8つのルール
クロノロのルールは以下の8つです。
- 汎用性のある記録ツールである
- 本部を通り過ぎていく情報を時刻とともに記載する
- 本部に入った情報および指示事項を記載
- 発信元、発信先を明記する
- 専属の記録員をおいて、本部長、リーダーが書くことを指示する
- 定期的に本部要員で共有、見直し、方針を明示する
- 予定については、予定が立った時刻を記載し、その横に予定事項、予定時間を記載する
- 速やかに電子化する
それでは一つずつ見ていきましょう!
1:汎用性のある記録ツールである
まずは一つ目、クロノロはどこでも使えるツールでないと、災害時に使うことができません。
そのため、ホワイトボードが一般的に使われています。
ホワイトボードのように扱うことができるビニールなどを使うと便利です!
このライティングシートがすごく便利です!
静電気で壁に貼ることもでき、どこにでもホワイトボードを用意できちゃう感じです!
訓練にも使えますし、クロノロ以外に研修にも使うことができます!
2:本部を通り過ぎていく情報を時刻とともに記載する
クロノロは経時的に情報を記載していくものです。
本部に入ってきた情報、本部から発信した情報を時刻とともに記載することが絶対的なルールになります。
時刻がわからないと、情報の順序がわからなくなります。
3:本部に入った情報および指示事項を記載
ここは内容の部分ですね。
入ってきた情報の内容とともに、その情報に対して本部がとった行動〈指示〉も記載しましょう。
例〉12時|警察に交通整備の指示を出した|本部→警察
4:発信元、発信先を明記する
上の例でいうところの、
「本部→警察」です。
・どこから入ってきた情報なのか?
・どこに出した指示なのか?
この二点を確認することができます。
あとから情報の確認をしたり、
指示の変更や念押しの時にも必要になります。
クロノロとは別に、「連絡先帳」を作成することで連絡を取りやすくなります。
5:専属の記録員をおいて、本部長、リーダーが書くことを指示する
記録員を固定することで情報の書き洩らしを防ぐことができます。
実際にクロノロの研修などで書いてみるとわかるのですが、
情報を集約しながら書くのはとても難しいです。
本部長やリーダーが書くことを指示することでクロノロを落ち着いて書くことができます。
〈読めない文字では仕方ありません〉
「専属のクロノロ係が必要」ということはそれだけクロノロをかける人材に需要があるということです。
災害医療、災害の現場で活動したい!と思う人にクロノロの勉強をオススメする理由の一つですね。
6:定期的に本部要員で共有、見直し、方針を明示する
クロノロはただただ書くだけでは活用できていません。
現状を共有、把握し、方針を決める。
つまりPDCAサイクルを回すためのツールの一つなのです。
定期的に情報共有、見直しをすることで
書き洩らしや、すでに対応した事例、対応できていない事例が見つかります。
7:予定については、予定が立った時刻を記載し、その横に予定事項、予定時刻を記載する
これはすでに「実際に何を書くの?」で紹介しましたが、
いつたった予定なのか?
を把握するために行います。
例〉15時|18時に救急車が来る
8:速やかに電子化する
ホワイトボードに書き続けているとすぐにいっぱいになってしまいます。
電子化して、後からでもみれるようにしてから消すようにしましょう!
現在は電子版のクロノロも開発されているので、
最初から電子化するのもありかもしれません。
しかしこれはルール1「汎用的なツールである」に反します。
電子版クロノロがさらに普及するといいですね!
電子化の方法としては、書き写すのではなく、写真として残しておくのも1つの手段です。
さて、クロノロジーは理解できましたか?
文字で見ても理解するのは難しいですよね・・・・
実際に研修に参加してみたり、普段の生活にクロノロを取り入れてみると理解が深まると思います。
クロノロ練習問題
練習問題として少しだけ災害対策本部のクロノロを書いてみましょう!
ページ下部に回答例を掲載しています!
~問題~
12時に電話が鳴りました。
「こちらDMAT本部の石川です。現在DMAT隊員4名を対策本部に向かわせているところです。
14時頃には到着すると思いますのでよろしくお願いします」
12時30分に電話が鳴りました。
「こちら陸上自衛隊の二村です。給水車を2台確保しましたが、どこの避難所に配備しますか?
決まり次第かけなおしてください」
13時にミーティングを行い、A避難所とB避難所に給水車を設置することにしました。
あなたは自衛隊にその旨を13時30分に伝えました。
~終了~
いかがだったでしょうか?
下に回答例を載せますが、答えは一つではありません。
分かりやすく、後から見返すことができればオッケーです!
クロノロ練習問題回答〈例〉
時刻 | 情報源 | 受取人 | 内容 |
12:00 | DMAT本部 石川 | あなた | DMAT4人が14時に到着予定 |
12:30 | 陸上自衛隊 二村 | あなた | 給水車2台確保 あとで連絡 |
13:00 | ミーティング 給水車をA避難所とB避難所に配備する方針 | ||
13:30 | 対策本部 あなた | 陸自 | 給水車をA避難所とB避難所に配備依頼 |
皆さんはどのようなクロノロをかけましたか?
後から見返して意味が分かるのかが重要です!
もう一度自分のクロノロを見返してみてください!!
それでは皆さんが災害対策本部などで活躍できることを願っています!
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