皆さんこんにちは、災害医療大学です。
「災害弱者・優先要支援者」という言葉を聞いたことはありますか?
災害発生時に状況判断が難しい、
自身で身を守ることが困難、
避難所生活で不便さを感じやすい人たちのことを災害弱者といいます。
今回はどのような人が災害時に支援を必要としているのか、CWAPという略語をもとに見ていきます。
CWAPとは
災害弱者をまとめるとCWAPとなります。
- Children:子供
- Women:女性〈妊産婦〉
- Aged people:老人
- Patients:患者
このほかにも、Pは貧困者〈Poor〉を含むこともあります。
日本語が苦手な外国人を含めることもあります。
それでは順にみていきましょう。
Children:子供
特徴
- 身長が低く、比重の重いガスの影響を受けやすい〈冷気も含む〉
- 体内貯蓄が少なく、脱水、低血糖になりやすい
- 自身のアレルギーを把握していない(場合が多い)
災害時には家族と離れ離れになってしまうことが多々あります。
突然の出来事にショックを受け、心を閉ざしていることもあります。
気が張った現場かもしれませんが、やさしく丁寧に接しましょう。
心を開くまでは何も話さないということもあります。
このような災害時の精神的なケアはPFA「サイコロジカルファーストエイド」に詳しく記載されています。
災害精神医療についてはこちら!
Women:女性〈妊産婦〉
特徴
- おなかが大きく身動きがとりにくいため、避難が困難な場合がある
- 横になりにくく、避難所では分娩対応も考える
移動のサポートをすることや、避難所の環境整備が重要
避難所では分娩の可能性や、配慮が必要なことがあるか実際に直接質問するといいかも!
乳児を連れている場合は授乳スペースを確保すること、
子供が泣くことをあらかじめ避難所の方に知っておいてもらう必要もあります。
厚生労働省が発表している「管轄避難所等の記録様式について」でも、
妊婦・産婦の人数を記載するようになっています。
Aged people:老人
特徴
- 体力、免疫力が低く、感染症にかかりやすい
- 脱水症状を起こしやすい
- 体温調節がにがて
- 移動に時間がかかる
慢性疾患を抱えていることが多く、常用薬を持ってきているかを確認する必要がある。
避難所の記録としては65歳以上・要介護認定者数があります。
要介護の方は特に配慮が必要ですね。
発災した際の避難にも時間がかかるため、逃げ切れないという例も多いです。
つまり災害による直接的な死ですね。
足が不自由で避難所に逃げきれず、そのまま餓死したというケースもあるそうです。
兵庫県医師会が発表している阪神淡路大震災の時の死亡者数です。
この資料からも60歳以上の死亡者数が多いことがわかりますね。
Patients:患者
特徴
- 疾患によって配慮する内容が異なる
あらかじめ症状などを聞き、容体が変化していないか定期的に聞くことが必要です。
感染症の場合などは隔離する等の処置も考慮しましょう。
難病患者・在宅酸素療養者・人工透析者・アレルギー疾患が具体的にあげられます。
避難所で病気になることも考えられます。
避難所で起こる疾患として有名なものとしては、下痢・嘔吐・発熱・咳・便秘・食欲不振・頭痛・不眠・不安があります。
食中毒や、風邪のような感染症が蔓延している可能性も考えられるため、
特に防疫の面からサポートが必要になります。
P:貧困層
特徴
- 災害による直接的な死が多い
なかなか取り上げられない話題ではありますが、実は貧困と災害死には関係があるといえるデータがあります。
「災害弱者と情報弱者」という本によると、
阪神淡路大震災の時の、
兵庫県における生活保護受給者の死亡割合は兵庫県平均のおよそ5倍と言われています。
他にも東日本大震災の時には
死亡率と一人当たりの市町村民所得に負の相関がありました。
=市町村民所得が低いほど死亡率が高い
=より貧困な地域ほど死亡率が高い
~批判的吟味~
東日本大震災のおける大きな被害は津波です。
つまり沿岸部(第一次産業が主流の地域)が平野部(第二次・三次産業主流地域)よりも被害を受けただけかもしれません。
「災害弱者と情報弱者」では統計的に、科学的に詳しく分析されています。
ぜひ読んでみてください!
災害弱者と情報弱者 3・11後、何が見過ごされたのか (筑摩選書) [ 田中幹人 ] 価格:1,650円 |
外国人
特徴
- 日本語がわからず正確な状況把握が困難
- 地理的に逃げる方向が分からない(旅行者)
- 文化が異なる
被災地で通訳をするボランティアもあるが、英語が話せるとより良い
ローマ字は使わないほうがよい
Takeを「テイク」と読むのか「タケ」と読むのかわからない
実際何人くらいいるの?
こちらの表は2019年に内閣府で報告されたもので、
災害時において高齢者・障害者等の特に配慮が必要となる者に対して適切な医療・福祉サービスを提供するための調査研究〈浜松医科大学:2018年〉
の結果です。
興味深いので是非読んでみてください!
あなたは何をできますか?
復興庁が発表した福島県の「災害関連死」つまり、防ぎえた災害死の多くが65歳以上の高齢者でした。
災害医療の大きな目的は防ぎえた災害死を減らすこと。
つまり、皆さんのミッションは、高齢者が防ぎえた災害死を起こさないこととも言えます。
点滴程度で治る病状で亡くなっていく患者を目の前にして
あなたは何をできますか?
避難バスに乗り切れなかった寝たきり患者をおいて、
あなたはエンジンをかけられますか?
自分たちはどんな状況の患者を救うのか?
見えないところで何を考え、助けを待っているのか?
ぜひこの本を読んでみてください。
避難弱者 あの日、福島原発間近の老人ホームで何が起きたのか? [ 相川祐里奈 ]
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いかに避難が難しく、実際にどんな気持ちで避難にあたったのか。
東日本大震災の際の原発近くの老人ホームからの避難、
高齢者の避難所生活がいかに大変であったかがわかります。
あなたの知っている老人ホームは大丈夫ですか?
今から対策できることはありませんか?
知識は武器になります。
まずは災害現場の状況を理解するところから始めませんか?
以上、「災害弱者とは何か」でした。
まとめるとこの表になります。
では確認テストを終えた人から解散で~す。
確認テスト
第一問 認知症患者は災害弱者である
第二問 老人は体が丈夫なため、特に配慮の必要はない
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回答一 正しい
回答二 誤り 健康な老人だったら何か手伝ってもらうのはありかも
次はこちらの講義をどうぞ!
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