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世界的な災害医療の基準:ブルーブックとは

皆さんこんにちは!
災害医療大学です!

2023年2月6日に発生したトルコ・シリア地震を受け、学長の身近な人も災害医療チームとして現地で活動しています。

災害医療チームの国際派遣に関して、

「世界中の災害医療に関する人たちが集まってCSCAはどうやって統一するの?」

とご質問をいただきました。

ということで、WHOが公開している、「緊急医療チームの分類と最低基準」通称「ブルーブック」をご紹介します!

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ブルーブックとは

ブルーブックとは、国際的な災害医療の基準を記したWHOの出版物です。

災害医療チームの実践的なガイドとしてだけでなく、チーム間の協働を促進することが目的となっています。

災害医療の原則であるCSCATTTでもご紹介したように、災害時では様々な医療チームが集い、活動します。効率的に協働するにはもちろん「C:コミュニケーション」が必須です。

しかし、世界各国から来た医療チームでは当然「言語の差」「医療水準の差」「倫理観の差」が生じます。

また、一つの単語においても文化の差があるととらえ方が異なる場合があります。そのため、各国の災害医療チームの「言語の統一」が必要になります。

ブルーブックでは、この言語の統一だけでなく、医療に関する最低水準や行動基準などを記しています。

blue book リンク

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ブルーブックの記載内容(目次)

ブルーブックに記載されている内容を超簡単にまとめると以下のようになります。

目次

  1. EMTの主導
    救急医療チーム(EMT)における分類と国際最低基準について
  2. 指針と基本基準
    災害時の活動方針について
  3. 分類
    EMT活動の分類と役割について
  4. 規定とキャパシティーの基準
    自然災害における、救急医療のシステムや各スタッフ数などに関する規定やキャパシティーについて
  5. 医療技術基準
    災害時のトリアージ、傷病者、小児、薬学、精神等の27項目の医療技術基準について
  6. 活動支援技術基準
    迅速な対応のための、活動する際の物流やWASH(衛生状態の改善)の基準について

付録

  1. EMT管理体制ールールと責任ー
  2. 国際的役割
  3. 主導原則
  4. 標準チェックリスト
  5. 専門ケアチームの種類
  6. 活動支援の概算

 

ここからはブルーブックに記載されている内容を少しだけご紹介します。

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4種の医療チームと専門的なケアチーム

ブルーブックでは各医療チームについて「移動性」「ケアのレベル」に基づいて4種類のタイプ分けをしています。

「タイプ1:モバイル」「タイプ1:固定」「タイプ2:入院外科救急医療」「タイプ3:入院医療」

以上の4タイプにくわえて「専門的なケアチーム」となります。

それぞれのタイプごとに求められる医療水準が異なり、補給される物資量も異なります。

詳細は本講義の後半で解説しています。

タイプ1モバイル急性外傷・外傷以外の症状の安定化など、場所を固定せずプライマリケアを提供することができる
タイプ1固定急性外傷・外傷以外の症状などを固定施設でケアを提供することができる
タイプ2入院外科救急医療タイプ1のサービスに加え、一般外科・産科外科・入院患者の急性期医療を提供することができる
タイプ3入院紹介医療タイプ2のサービスに加えて専門機関等への紹介と集中医療を提供することができる
専門的なケアチーム基本的にはタイプ2.3に組み込まれ、初動・外科・リハビリ・メンタルヘルス・産科・新生児科・学際的・メカニックのサポート

タイプ1:モバイル

タイプ1:モバイルの施設では、急性外傷・外傷以外の症状の安定化など、場所を固定せずプライマリケアを提供することができる医療チームです。

トリアージや、安定化療法など、一般的に災害医療で連想されるような活動をします。

活動場所を固定しない移動診療所で、テントや専用車両を用いて移動できる外来診療施設となります。

最低限1日に50名以上の外来診療ができます。

タイプ1:固定

タイプ1:固定の施設では、急性外傷・外傷以外の症状などの初期治療を提供することができる医療チームです。

トリアージや安定化療法だけでなく、基本的な医療の提供を行います。

最低限1日に100名以上の外来診療ができます。

タイプ1モバイルとの違い

タイプ1モバイルとの大きな違いは機動性に重きを置いているか?です。

タイプ1固定は、基本的に移動を念頭においていないため、より多くの医療提供にリソースを割いています。

タイプ2

タイプ2の施設では、タイプ1のサービスに加え、一般外科・産科外科・入院患者の急性期医療を提供することができる医療チームです。

最低条件として以下の項目があります。

  • 一日の外来患者数100人以上
  • 1つの手術台
  • 手術台1台ごとに20床以上のベッド
  • 1日に7回の大手術もしくは15回以上の小手術

24時間患者を受け入れることも特徴の一つです。

タイプ3

タイプ3の施設では、タイプ2のサービスに加えて複雑な紹介と集中医療を提供することができる医療チームです。

最低条件として以下の項目があります。

  • 100人以上の外来患者
  • 40人以上の入院患者
  • 2つの手術台
  • 40床以上のベッド
  • 1日に15回の大手術もしくは30回以上の小手術
  • 4つの集中治療ベッド

専門ケアチーム

専門ケアチームは、基本的にはタイプ2.3に組み込まれ、以下のような専門的ケアを行います。

  • 下痢性疾患
     コレラ、⾚痢菌およびその他の下痢の発⽣を含む
  • ウイルス性出⾎熱
     エボラウイルス病、マールブルグウイルス病、ラッサ熱など
  • ベクター媒介性疾患
     デング熱、⻩熱病、ジカ熱など
  • 呼吸器感染症
     感染性が高く死亡率が低いインフルエンザ様疾患、感染性が高く症状が重く死亡率が高いSARS様疾患
  • 埋葬チーム
  • 予防接種チーム
  • 感染管理チーム
  • 外科専門治療チーム
  • 火傷専門チーム
  • 整形外科、再建外科
  • 一般的な外科
  • 緊急時眼科サービス
     視覚補助具やメガネなど
  • 脳神経外科
  • 顎顔面ケア
  • リハビリテーション
  • メンタルヘルス
  • 妊産婦、新生児のヘルスケア
  • 集中治療室
  • 小児科
  • 病棟ケアチーム
  • 入院栄養管理
  • 透析
  • 被ばく医療

実際に世界のどんな団体がどのタイプに分かれて活動しているのかはこちらから見ることができます。

日本からはJICAが記載されており、「タイプ1:モバイル」「タイプ1固定」「タイプ2」「専門:外科」「専門:透析」となっています。

EMT GLOBAL CLASSIFIED TEAMS
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タイプごとの臨床基準27項目

トリアージ

タイプ1モバイル一次トリアージ・現場でのトリアージ
タイプ1固定一次トリアージ・現場でのトリアージ
タイプ2外科トリアージ
タイプ3複雑な紹介トリアージ

評価・蘇生・安定化

タイプ1モバイル基本的な蘇⽣と安定化
タイプ1固定基本的な蘇⽣と安定化
タイプ2紹介の受け⼊れ、 ⾼度な安定化と紹介
タイプ3紹介の受付、補助換気集中治療の紹介

病棟管理

タイプ1モバイル該当なし
タイプ1固定基礎介護治療
タイプ2適切な専門医療
タイプ3集中治療

創傷

タイプ1モバイル初期創傷ケア
タイプ1固定初期創傷ケア
タイプ2完全な⼿術創傷ケア
タイプ3複雑な再建創傷ケア

火傷

タイプ1モバイルやけどの応急処置、痛みの緩和
タイプ1固定全⾝の5%以下の表在性熱傷
タイプ2全⾝の20%以下の表在性熱傷
タイプ3全⾝の20%以上のすべての表在性熱傷、顔、⼿、会陰、性器、⾜の裏の熱傷

骨折・手足の損傷

タイプ1モバイル基本的な⾻折管理
タイプ1固定基本的な⾻折管理
タイプ2⾼度な⾻折管理/⼿術
タイプ3特定・複雑骨折の整形外科的治療

脊髄損傷

タイプ1モバイル評価と転送
タイプ1固定評価と転送
タイプ2呼吸補助と転送
タイプ3複合ケア

伝染病

タイプ1モバイルスクリーニングと同定
タイプ1固定隔離施設の提供
タイプ2⼊院が必要な伝染病患者のケア
タイプ3集中的な治療が必要な複雑なケース

非感染性疾患

⼼⾎管疾患、糖尿病、がん、肺疾患、喘息、透析依存性腎不全、肥満、てんかん、うつ病など

タイプ1モバイル基礎外来慢性疾患診療
タイプ1固定基礎外来慢性疾患診療
タイプ2急性増悪の⼊院治療
タイプ3緊急増悪の⾼度集中治療管理

妊産婦・新生児

タイプ1モバイル基本的な緊急産科および新⽣児ケア・性と⽣殖に関する健康
タイプ1固定基本的な緊急産科および新⽣児ケア・性と⽣殖に関する健康
タイプ2包括的な緊急産科および新⽣児ケア・性と⽣殖に関する健康
タイプ3包括的な緊急産科および新⽣児ケア・集中的な性と⽣殖に関する健康

小児科

タイプ1モバイル基本的な外来⼩児科ケアと安定化、栄養スクリーニング
タイプ1固定基本的な外来⼩児科ケアと安定化、栄養スクリーニング
タイプ2緊急⼊院患者および外来患者の⼩児科ケアおよび安定化、⼩児科⼿術、栄養失調の管理
タイプ3重病の⼦供のケア、複雑な⼩児外科・⼩児および新⽣児集中治療

鎮痛・麻酔

タイプ1モバイル局所⿇酔・疼痛管理
タイプ1固定局所⿇酔・疼痛管理
タイプ2⼩児および成⼈の局所、脊椎および全⾝⿇酔
タイプ3換気を含む⻑期術後 (中間) ケアの能⼒

集中治療

タイプ1モバイル該当なし
タイプ1固定該当なし
タイプ2該当なし
タイプ3集中治療が可能

手術・周術期

タイプ1モバイル局所⿇酔による⼩⼿術
タイプ1固定局所⿇酔による⼩⼿術
タイプ2⼀般的な外科的ケア
タイプ3専⾨的かつ⾼度 な外傷および再建・外科的ケア
(整形外科および顎顔⾯外科を含む)

栄養失調

トリアージの一環として生後6-59ヵ月の子供の栄養スクリーニングを行います。

タイプ1モバイルスクリーニング、外来治療の開始
タイプ1固定スクリーニング、外来治療の開始
タイプ2医学的合併症を伴う症例の初期臨床管理
タイプ3新⽣児および⼩児集中治療

緩和ケア

タイプ1モバイル紹介による初期緩和ケア
タイプ1固定紹介による初期緩和ケア
タイプ2緩和外科的ケアを含む症状のコントロール・終末期ケアのサポート
タイプ3緩和外科的ケアを含む症状のコントロール・終末期ケアのサポート

リハビリテーション

タイプ1モバイル基礎リハビリテーション
タイプ1固定基礎リハビリテーション
タイプ2外来および⼊院リハビリ テーション
タイプ3外来および⼊院リハビリ テーション・複雑な外傷患者向け

メンタルヘルス

タイプ1モバイル・タイプ1固定・タイプ2・タイプ3共通

評価、⼼理社会的応急処置、必要に応じて紹介

輸血

タイプ1モバイル該当なし
タイプ1固定該当なし
タイプ2安全な輸⾎能⼒
タイプ3安全な輸⾎能⼒

臨床検査

タイプ1モバイル基本的な外来検査・ 迅速な診断テスト
タイプ1固定基本的な外来検査・ 迅速な診断テスト
タイプ2基本的な⼊院検査
タイプ3⾼度なテスト

画像診断

タイプ1モバイル画像診断なし
タイプ1固定画像診断なし
タイプ2X線
タイプ3X線、eFAST* 超⾳波

臨床薬学

タイプ1モバイル外来薬の供給、破傷⾵予防
タイプ1固定外来薬の供給、破傷⾵予防
タイプ2⼿術薬および⿇酔薬を含む⼊院患者および外来患者への医薬品供給
タイプ3集中治療レベルの医薬品供給

薬の供給として現地の薬局で薬を買い集めたり、麻薬管理として鍵付きリュックを24時間管理などを行います。

滅菌

タイプ1モバイル基本的な蒸気オートクレーブまたは使い捨て材料
タイプ1固定基本的な蒸気オートクレーブまたは使い捨て材料
タイプ2トレーサビリティを備えた完全な⼿術⽤オートクレーブ
タイプ3トレーサビリティを備えた完全な⼿術⽤オートクレーブ

感染制御

タイプ1モバイル・タイプ1固定・タイプ2・タイプ3共通

施設での適切な感染、予防管理のための適切なプロトコル

健康増進・公衆衛生

健康増進や予防につながる情報発信や教育です。

タイプ1モバイル・タイプ1固定・タイプ2・タイプ3共通

コミュニティ参加の原則に従った管理

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CBRNE・毒物

CBRNEとは、化学・生物・放射性物質・核・爆発物です。

タイプ1モバイル評価、可能な場合の除染、応急処置および紹介
タイプ1固定評価、可能な場合の除染、応急処置および紹介
タイプ2解毒剤の提供
タイプ3ICU ケア

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